48 わが島の桜は暖流桜

 「サクラサク」が合格電報に使われたのは、桜が入学式の頃に咲くからです。江戸時代からもてはやされているソメイヨシノは、種子島では寒さが足りず、花芽が少なくて開花も遅れます。暖地向きの桜が望まれる中、専門家たちや地元住民の努力のかいあって、早咲きの暖流桜が登場し、代表格になりました。
 種子島では、1月下旬頃に咲く緋寒桜、2月上旬の河津桜、同中旬から3月上旬に満開となる暖流桜、さらに山桜と順々に咲きます。種子島中学校の中庭の暖流桜は今年も卒業式に合わせて咲きました。
 旧古田中学校の校門前に暖流桜が植樹されたのは、開校50周年を迎えた1996(平成8)年春です。苗木を寄贈した県農業開発総合センター熊毛支場(脇門英美支場長)によると、1976(昭和51)年に日本桜の会から導入した51品種の中に、2月に開花する八重桜の品種「松月」があり、その台木から芽を出した品種だそうです。1987(昭和62)年ころから積極的に増殖し、あっぽ〜らんどなど島内に広まりました。
 「暖流」と名づけられたのは2006(平成18)年、太平洋を北上する黒潮のように、西日本の温暖な地域に広がってほしいという願いをこめたといいます。
 熊毛支場の近くに住む元消防職員能勢勘司さんは、暖流桜の植樹を四半世紀続けています。実生で育てたヤマザクラの台木に接ぎ木をして、これまでに市内各所に植えた数は100本を超えたそうで、「暖流桜が広まり、島でも花見の習慣ができて、うれしい」と話しています。
 旧古田中学校には校門脇に暖流桜と同年に植えられた卒業記念樹があります。花が黄色い鬱金桜と緑がかった御衣黄桜です。入学式の頃には咲くでしょうか。

暖流桜の花に止まるメジロ