43 夫婦仲良く五百年

 種子島開発総合センター鉄砲館で10月から開催中の「上妻家文書展」は、夫婦の肖像画としては日本最古級の法華曼荼羅を初公開するほか、鉄砲伝来時の島主・種子島時尭(1528〜79)の鑓の許状など、修復、分析を終えた貴重な史料を多数紹介しています。
 夫婦の肖像は、種子島家の筆頭家老として島政に尽くした上妻家第22代当主家雅(1522年没)と夫人。今から507年前、室町時代の永正10(1513)年、息子の右直が両親の存命中に作成した寿像です。
 生前に自分のために仏事を修して冥福を祈る逆修は、功徳が大きいと考えられました。「浄蓮」「妙永」の法号を受けて法衣をまとう二人は、横並びに座り、りりしくも穏やかな面立ちです。まなざしを交わす仲睦まじい姿からは、夫婦円満の空気が、幾世紀もの時を超えて伝わってきます。
 中世の夫婦像は全国的に珍しく、東京・養玉院の所蔵する対馬宗家の宗貞国(1494年没)夫婦像が現存最古例とされ、ほかには京都・妙蓮寺の渡辺浄慶・妙慶夫婦像が知られますが、家雅夫婦像は保存状態がきわめて良く、彩色の鮮やかさに目を奪われます。
 また、時尭への鑓術の許状は、筋肉と骨格だけの人体で姿勢を示し、鑓先に動線を描く技法が極めて貴重な史料とされています。簡潔でアニメチックな絵は、どこかコミカルでもあります。
 種子島は武家社会南限の地。13世紀から統治した種子島家をはじめ、上妻家など家臣団の関係も示す文書の数々は、中世から近世の種子島、薩摩藩全体の歴史像を解き明かそうと私たちを誘います。11月23日まで。

「上妻家雅夫婦」像などを示すポスター