41 ナガラメと巨大漁礁

 種子島の子どもたちに馬毛島の自然や歴史に触れてもらう体験活動が今年3回目を数えました。小中学生と高校生を募集(定員20人)したところ、競争率3倍の高倍率でした。保護者2人を含む参加者と職員との計30人が、今回も漁船3隻で渡島しました。

 北東部の葉山港から市道1号線を南下すると、赤やピンクのキョウチクトウの花が目立ちます。防風林にするクロマツの繁みは年々濃くなっているようです。同様に防風林になるモクマオウも元気でした。絶滅危惧種のヒメノボタンの自生地では今ごろ咲き誇っているだろうと想像しました。緑陰の小川にはベンケイガニの大群がうごめき、道沿いでは黒紫色をした羽のチョウトンボが優雅に飛んでいました。

 ガジュマルがトンネル状に林立する小道の入り口で、クワズイモの葉裏にマダニが張りついているのを見て気味悪がった子どもたちも、垂れ下がるガジュマルの気根に触れると、ぶら下がって楽しんでいました。

 時折、マゲシカが沿道で視界を横切りましたが、今回は遭遇が少なかったようです。島を離れて海上を周回しながら観察すると、斜面の緑地で草を食んだり、季節風で変形したハマヒサカキの木陰に身を隠したりしている小規模の群れがあちこちで確認できました。

 漁業基地跡の高坊に近い海ではナガラメ(トコブシ)漁の漁船を見かけました。馬毛島の漁期解禁(6月1日)から間もないころ、「ナガラメが多い海域で陸地を見上げたら、緑が濃い。松が多いようだ」と漁師さんが話すのを聞きました。陸地を歩いても、クロマツが高々とそびえ、若い木も含めて樹林の厚い一帯があります。海の生き物への緑の影響を実感し、馬毛島は「巨大な漁礁」だと改めて思います。

クロマツなど樹林の厚い沿道