32 「風の神」と首里城(2019年12月号)

 世界遺産・首里城の焼失で西之表市の無形民俗文化財「ヨンシー踊り」の縁を思い起こします。この伝統芸能は江戸時代の首里城落成で披露された「国頭サバクイ」がルーツです(2017年12月号本欄参照)。
 沖縄本島北部の山から大木を引き出す作業の木やり歌「国頭サバクイ(くんじゃんさばくい)」は、黒潮に乗る交易で種子島に伝わり「ヨンシー踊り」に変わりました。航海安全の「風の神」を祭る風本神社に奉納しています。シビと呼ぶ竹の棒ではらい清める厳粛な演舞に続き、赤い天狗団が鋸やヨキ(斧)、大工道具のバンジョウガネ、山ごもり用の米びつ、メシガイを持って面白おかしく踊ります。
 〽サー首里天加那志(しゅーてんがなし)じゃ ヨンシーヨンシー
 沖縄の民謡研究家、仲宗根幸市さん(1941〜2012)によると、北殿落成の祝宴でサバクイ(捌理=地方役人の職名)が歌い踊り、大喝采をあびました。首里城全焼は沖縄戦など5回に及ぶそうですが、3回目の全焼後の18世紀前半の出来事とみられます。
 仲宗根さんは生前、「ヨンシー踊りは神社に奉納され、山仕事や大工の職能者が神格化したのでしょう。娯楽芸能として発展した沖縄より、種子島の方が古俗を伝えているのでは」と考察を語ってくれました。
 往時の琉球交易は、種子島からヒトツバ、タブノキ、お茶を運び、砂糖や漆器を持ち帰ったそうです。こうした交易と文化の縁から、来たるべき首里城の再建へ種子島産木材の提供が思い浮かんでいます。

首里城正殿=2017年11月、全国都市問題会議視察で

首里城正殿=2017年11月、全国都市問題会議視察で