24 逆さ地図の世界観(2019年4月号)

 本市の市制施行60年を機に「市史」づくりへの取り組みを始めています。歴史シンポジウム「種子島と東アジア海域」は、その出発点ともなる内容でした。
 中世史が専門の村井章介教授(立正大学、東京大名誉教授)は基調講演で、種子島に連なる幾多の「海の道」をクローズアップさせました。鎌倉、平戸、大隅・薩摩ー鬼界十二島、日向細島ー堺・尼崎、シャムー琉球、豊後ー浙江ー関東、パタニ(タイ)ー江南ー紀州と、文献に人々の動きをたどり、種子島氏の出自、鉄砲、ポルトガル人漂着などの史実を読み解きました。
 屋良健一郎准教授(名桜大学)は近世の種子島氏と琉球の交易に注目しました。甲女川に橋をかけた種子島の吉留伝平とみられる船頭が、商売に渡航した琉球で鳥居を建てたとする沖縄側の資料を紹介しました。
 伊川健二教授(早稲田大学)は西村天囚が世界一周中のヴェネチアで、天正遣欧使節ゆかりの寺院を訪ね、西欧人が日本に初めて到達した年代の真実に迫ろうと試みたのではないかと語りました。
 また、村川元子さん(松寿院研究家)は女殿様と漂流者天毛政吉の話、鮫島安豊さん(「鉄砲館」参与)は海難事故に見る歴史、漂着文化を熱く語りました。
 ところで、このシンポの前週開催の市民フェアで講演をした大阪大学の湯浅邦弘教授は、南北が上下逆転した地図を映し出しました。海路、欧州から南下して東アジアに回る船には、種子島が日本列島の入り口となります。種子島が「薩摩とほどよい距離」にあり、日本の最先端地にあるとの世界観を示しました。
 先人の歩みに学び、故郷を子孫に引き継ぐためには、固定観念にとらわれない柔軟な思考も大切です。

湯浅教授の逆さ地図(種子島は赤)

湯浅教授の逆さ地図(種子島は赤)