23 タコの天ぷら(2019年3月号)

 「今年は種子島鉄砲祭りが第50回の節目です。種子島にぜひお越しください」
 「私は市長3期目ですが、就任以来、西之表市長が2度も訪問して来たのに、私は一度も訪問していません。ぜひとも、行きたいです」
 ポルトガルのヴィラ・ド・ビスポ市のソアレス市長は私の問いかけに、即座に笑顔で答えました。
 いつしか私たちは、お国自慢をしていました。
 彼らは、美しい海岸のある自然、温暖な気候、そして、歴史に誇りをもっています。大航海時代に活躍したエンリケ航海王子を代表とする英雄や偉人たち、関連する建築、遺跡を保存し、大事に活用しています。
 私たちも、西欧との運命的な出会いを経て、火縄銃と火薬の国産化を果たした島主や刀鍛冶ら家臣たちの偉業、宇宙センターを擁し現代も科学技術の先端と関わっている郷土を誇りにしています。
 日本とポルトガルは遠く離れ、お互い会うのは初めてで言葉も十分には通じないけれど、海を通じてのつながりや歴史的な縁を思い、旧友や肉親に再会したような懐かしさがわき上がるのを覚えました。
 歓迎の夕食会のメニューに「Tempura de Polvo」(タコの天ぷら)がありました。カステラ、タバコ、カルタと同じく、天ぷらも日本語になったポルトガル語の一つだと実感することでした。
 訪問中、通訳を介してどこか遠慮がちな大人たちに比べ、4人の小中学生は言葉の壁など無いかのようにたくましく行動しました。折り紙やけん玉といった遊びを通じて、すぐ仲良くなりました。鉄砲伝来450年を契機に始まった両地の縁をさらに強くしていきたい。訪問団の一人ひとりがそう感じたと思います。

リスボンの「発見モニュメント広場」

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