15 鉄浜の空気(2018年7月号)

 サーフィンをめぐる喜多一郎監督映画の2作目「ライフ・オン・ザ・ロングボード 2ndウェーブ」の撮影が6月に種子島の各地でありました。13年前に制作された前作品は、東京で定年を迎えたサラリーマンの米倉一雄(故・大杉漣さん演じる主人公)が、サーフィンに第二の人生の契機を見出す物語でした。
 来春の全国公開を予定する今回作は、サーフィンに没頭しつつ都会生活にもがく青年、梅原光太郎が主人公です。ブランクを置いて再訪した種子島の人々とふれあう中で、夢に向かって再び立ち上がって行きます。
 種子島をサーフィンの聖地とし、ロケ地は宇宙センター周辺など広範囲に及びましたが、前作同様、太平洋に面した安城の鉄浜(かねはま)海岸が主な舞台になりました。鉄浜はかつて、真っ黒に見えるほどの砂鉄に覆われていました。運搬作業に活躍する馬が待機した広場を地元では今も鉄馬場(かねばば)と呼んでいます。
 ロケの終盤、安城校区の役員や住民らが鉄馬場にテントを張り、関係者に昼食をサービスしました。ミズイカ、ナガラメ、ニガタケの炭火焼きや天ぷら、煮しめなど、海山の幸と家庭料理の心づくしに俳優やスタッフ、エキストラ出演者たちも喜んでいました。
 別の日のことですが、光太郎役の吉沢悠さんが鉄浜の印象を、こう語ってくれました。
 「浜の空気がいい」
 よそでは、乗る波を争うサーファーが険悪になることがままあるそうです。でも、ここは違っている、と。
 種子島がほめられ、うれしく、誇らしく思いました。

海の幸山の幸を炭火で焼く地域の皆さん

海の幸山の幸を炭火で焼く地域の皆さん