13 移住考(2018年5月号)

 伊関の柳原集落で4月15日、132周年移住記念祭が開かれました。1886(明治19)年から翌年にかけて、甑島から移住し開墾した先祖の偉業をたたえる行事です。記念碑前であった式典には、同じ甑島出身者が住む国上・野木之平集落の住民や薩摩川内市下甑町手打から訪れた2人も参加しました。式典後、柳原公民館で懇親会と敬老会が同時開催され、鉄砲太鼓、フラダンスなどの演芸でにぎわいました。
 甑島からの移住は相次ぐ台風襲来による飢饉がきっかけで、このほかにも現和・川氏、安城・平山、平園、大野、立山・御牧、榕城・石堂、今年川、古田・上之町、下西・鞍勇、住吉・形之山の各集落があります。
 1981(昭和56)年に種子島高校郷土研究部が刊行した「種子島研究19号 西之表市の甑島移住部落調査」は、各地の古老を訪ねた労作です。入植時の事情や集落の戸数、伝統行事を調べ、航海や開拓の苦労を二十番まで綴る「数え歌」の歌詞などを記録し、3年生部員は感想を次のように結んでいます。
 「僕たちは、自分の今住んでいる種子島のことについて、もっと知るべきではなかろうか。そのことが新たに故郷を見直し、故郷を愛することになるだろう」
 明治、大正期の移住は県内からは山川、坊之津、徳之島、沖永良部島、喜界島、桜島、県外は香川県、静岡県など。きっかけは天災から、漁業、茶園、製糖などの産業振興に変わり、近年の特徴はサーフィンです。
 西之表市の人口は、市制施行の60年前に比べ半分に減っていますが、大きな移民が一段落した後の昭和初期に戻ったということもできます。

移住記念祭で披露されたフラダンス

移住記念祭で披露されたフラダンス