11 羽生棋士と種子島(2018年3月号)

 将棋の永世七冠という空前絶後の偉業を成し遂げ、国民栄誉賞に輝く棋士羽生善治さんは、種子島ゆかりの人です。生まれは埼玉県ですが、曽祖父の羽生主右衛門さんは西之表市小牧に住んでいました。
 主右衛門さんは県議を務めた人で、種子島が生んだ横綱、西ノ海嘉次郎(1880~1931)が相撲界に入るきっかけをつくりました。下西・川迎出身の西ノ海は本名・牧瀬休八。種子島相撲のチャンピオンだった休八を主右衛門さんが鹿児島巡業中の逆鉾関に紹介し、井筒部屋入門に導いたわけです。
 羽生家の先祖は、室町時代の慶長年間に屋久島から種子島に移り住んだそうです。島主種子島家の重臣だった羽生道潔(1768~1845)が建てた屋敷は、孫の慎翁(1826~1901)が茶道、花道の修業を積みました。今、「月窓亭」として観光客を迎えています。
 善治さんの初タイトルは1989年12月の竜王でした。この時19歳。さらに棋王、王座、棋聖、王位、名人、王将と獲得を続け96年2月、初めて七冠を独占します。七冠達成を祝い親類たちが建てた記念碑と記念樹(紅梅、白梅)が西之表の納曽にあります。永世名人(通算5期)などの永世称号も重ね、永世竜王(通算7期)でついに永世七冠も達成しました。
 1月16日、東京での第30期竜王就位式で大勢のファンにあいさつした羽生さんは「初心を忘れるな」を肝に銘じていると語りました。飾らない言葉を眼前に聞き、私も思いを新たにしました。

羽生棋士(左)と佐藤康光・連盟会長

羽生棋士(左)と佐藤康光・連盟会長