1 街の色(2017年5月号)

 パリに住んで活躍した、種子島出身の画家日高蔀(しとみ)さんの絵が「種子島開発総合センター鉄砲館」の玄関ホールに掲げてあります。西之表市の姉妹都市であるポルトガルのヴィラ・ド・ビスポの風景です。この絵を見ると、1992(平成4)年の秋を思い出します。私は、鉄砲伝来450年を期に姉妹都市盟約を結ぶ前年のヴィラ・ド・ビスポを訪ねました。当時、北九州市の朝日新聞社会部に勤務し、生まれ故郷である西之表市の市民訪問団に同行取材する機会を得たのです。
 訪問団を乗せて首都リスボンから南に向かうバスは、人家のほとんど無いオリーブや松、アーモンドの林の間を走りました。そのうち、窓外の景色を見ていた男性のつぶやいた言葉が印象的でした。
「田舎やなあ、種子島より」
 ヴィラ・ド・ビスポはイベリア半島南部の小さな街です。大航海時代の航海者たちの母港となったサグレス港の近くにあります。遠く離れた二つの街の縁を思って描かれた日高作品は「朝のサグレス港」ほか、鉄砲館にたくさん展示されています。
 ところで、昨年、改装成った西之表市民会館の外壁の色は、ヴィラ・ド・ビスポの家並みの色をイメージしています。商店街にも同じ色を使った建物がいくつかあります。西之表市の街をこれから盛り上げる色になりそうな予感がしています。

日高蔀氏作「ヴィラ・ド・ビスポ市」(部分)

日高蔀氏作「ヴィラ・ド・ビスポ市」(部分)